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坂本博之さん

元プロボクサー

Hiroyuki Sakamoto x Mirai no Mori from Matt Miller on Vimeo.

Hiroyuki Sakamoto「幸せだったとき、悲しかったとき、そして腹が立ったときのことを思い起こして、その気持ちすべてをこのパンチに込めるんだ。」

坂本博之氏が、ボクシングにあこがれる子どもたちに向き合い語りかける。そして、「さかもっちゃん」——子どもたちは親しみを込めて彼をそう呼ぶーが構えるミットに、まだ柔らかな自らの拳を打ち込む。

元プロボクサーで、日本および東洋太平洋ライト級チャンピオンでもある坂本博之氏。彼は内に込めた感情を、ボクシングに転換する方法を知っている人だ。彼自身も児童養護施設で育った。そんな彼が自身の体験を生かして行っている活動が、児童養護施設への慰問活動だ。

1970年福岡に生まれた坂本氏の両親は、彼がまだ幼い時に離婚。その後は母と暮らしていたが事情があり6歳の時に親せき宅に預けられた。しかしそこでは食事がろくに与えられず食べられるのは学校の給食だけ。給食のない土日は空腹を満たすため、弟と一緒に川で捕えたザリガニを食べたこともたびたびだったという。そしてついにある日、弟が栄養失調で倒れ彼自身も拒食症に陥る。これをきっかけに児童相談所の職員が彼の服がいつも同じであること、学校で使用する文具などを持っていないこと、いつも空腹で病気がちであることに気づき、児童養護施設に預けられることになった。

児童養護施設では、毎日3度の食事が与えられ、彼は初めて安心感を得ることができた。声をだして笑ったり、微笑んだりすることを覚えた。そして、ボクシングの試合を食堂のテレビで初めて見て、鮮烈な衝撃を受けた。将来、ボクシングのリングに立とうと決心した。

小学校からボクシングの練習を始めたものの、金銭的な事情からきちんとしたボクシングジムに通うことや道具をそろえることはできなかった。その代わり、水を入れたジョッキや岩などをウェイト替わりにして練習を重ねた。本格的にトレーニングを受けられるようになったのは16歳になってからのことだ。そして90年代は、地元で、国内で、そしてついには国際試合で実績を上げるまでになった。全盛期はボクサーとしての彼の名を知らない者はいなかった。

そんな名声とは裏腹に、坂本氏は決して自身のルーツを忘れることはなかった。20歳のころから、自分の育った児童養護施設やそのほかの施設でボランティア活動を行い、自らの試合を施設で育つ子どもたちのために捧げてきた。箱にいっぱいに詰めたお菓子を施設に持って行ったり、コンサートやファミリーレストランに子どもたちを連れだしたりした。こんなシンプルな活動だけで、そして良き相談相手になるだけで、子どもたちのたくさんの笑顔と幸せな姿を見ることができた。「私たち大人はこの子どもたちのために、もっとできることがあるはずだ。」坂本氏はそう訴える。

坂本氏は現在、東京の西日暮里にSRSボクシングジムを構え、練習生たちの指導にあたっている。ここでは、ボクシングの厳しい練習に打ち込むことで、練習生自身の夢を見つける手助けをする。私たちが取材に訪れた際には、鹿児島の児童養護施設で育つ10代の女の子がトレーニングを受けていた。彼女は、坂本氏の家族とともに氏の自宅に一週間滞在しながらジムに通っているそうだ。一方で、背中に入れ墨を背負った元暴力団員の青年にも出会った。ボクシングに人生の救いを見出す前は、反社会的な10代を過ごしていたという。

みらいの森との関わり

今年、坂本氏はみらいの森のサマーキャンプを訪れた。キャンプに参加している児童養護施設の子どもたちに自身の生い立ちを話し、エールを送った。そして、ボクシングのデモンストレーションやミニレッスンでグローブをつけてみたい人を募ると、ほとんどの子どもたちが進んで名乗りを上げた。IMG_0442

このような形で子どもたちと関わっていると、言葉なんかなくても気持ちでつながることができるのだ、と坂本氏は言う。「心と心のつながり。大人とか子どもとかは関係ない。心対心、人間対人間なんだ。みらいの森のキャンプを訪れたとき、改めてそう感じた。」

坂本氏は、子どもたちに夢を追い続けてほしいと願う。お金がないから、道具がないから、夢をあきらめなければならないということはない。「君自身が自分の夢と向き合う強い意志があるのかどうか。他人にそれを叶えてもらおうなんて思うな。自分で叶えるんだ。一歩、半歩、それよりも小っちゃくてもいい。熱を持って夢に少しでも近づいていくことだ。」
まだ夢なんて見つかってない、という子どもたちに対しては、あきらめずに探し続けろと言う。「毎日やるべきことをやる。何気ない日常生活のなかに、そして日々出会う人びとの中に君が夢を見つけるヒントが必ずある。」

もし君が情熱に導かれて、一生けんめい努力をしていたら、必ず周囲から応援してくれる人が現れる。今、とにかく始めることだ。「明日じゃない、来週でもない。今だ。」

みらいの森は、坂本博之氏をみらいの森アンバサダーとして歓迎いたします。

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