自分の場所

居場所探し

「友達が欲しい。誰も友達になってくれない。」落ち着きがなく、1年に1度は骨折や火傷を繰り返す小学3年生の五朗君はそう嘆いていました。遊び相手が見つかっても、長時間仲良く遊ぶことは難しく、何か興味をひかれるものを見つけると、周囲の安全も確認せず、衝動的にダッシュ。彼の突発的な挙動からは、まるで「バサッバサッ」という音が聞こえてくるようでした。こんな五郎君をみらいの森のキャンプに参加させたのは、日頃やむを得ず外出の機会を制限していた彼に、全身を使って思いっきり野山を駆けめぐってほしいという私たち職員の願いからでした。

みらいの森との出会い

そして迎えた初めてのサマーキャンプ。荷物が重くて最寄り駅までの移動で、五郎君は早速へそを曲げてしまいました。新幹線で移動中の2時間半もじっとしていられず、車内探索を開始。キャンプ場に到着しても、みらいの森スタッフの「集合~!」の号令は野山に響くばかりで、五郎君には届いていないかのようでした。また、ことあるごとに「ヤダ!」を連発し、幸か不幸か、私たちの狙い通り野山を駆けずりまわり、そのまま姿が見えなくなることもしばしば。そんな五郎君の様子に気づいたジェフから、初日のミーティングで声をかけられました。「五朗君にどうしてあげたらいい?楽しんで貰いたいんだけど、同時に安全でないと楽しい場でなくなってしまう。」私たち職員にとっても、五朗君がどうしたらみらいの森を満喫できるのか、一緒に考える大事な機会となりました。「何ができる?」「協力したいんだ。」そんなジェフの気持ちを受け止めた五郎君の態度にも、徐々に変化が見え始めました。

成長とこれから

「集合~!」の号令に、少し遅れてでも反応をし始め、話を一番前で聞くようになり、チームの輪の中に時折加わるようになりました。さらに、スタッフの目の届く範囲内で遊び、手を挙げて発言するなど、みらいの森から期待されることに対して、彼なりに精いっぱい応えているようでした。その後もキャンプマジックを継続するためにみらいの森の週末プログラムにも参加し続け、小学4年生になるころには、「集合~!」のかけ声に従い、7割ほどの確率で輪の中に集まることができるようになりました。そんな五郎君の変化に気づいた周囲の人たちも「五郎君、柔らかくなったよね。」「我が強いのは変わらないけど、相手を受け入れる余裕が出てきたよね。」と彼の成長を称します。そして、いまでは学校でも一緒に遊べる友達ができたと嬉しそうです。これまでの荒々しさが息をひそめ、感情の奥底に育まれていた温情の部分がじわじわと滲み出ているようです。今後も、みらいの森という場で暖かく育まれ、大きくなっていく彼の未来が楽しみです。