みらいの森の子どもたち
みらいの森の子どもたち

児童養護施設とは
児童養護施設とは、親と一緒に暮らせない、または、親や家族による適切な養育が困難な1〜18歳の子どもが生活している施設です。入所理由はさまざまで、親との死別、離婚や病気、経済的な理由などが挙げられます。近年では、親族からの虐待が増加傾向にあることが懸念されており、報告によれば、施設に暮らす子どもの71.7%が過去に虐待を受けた経験があるとされています。
さらに、最近の調査によると、日本には610以上の児童養護施設があり、約23,043人の子どもたちが生活しています。施設に暮らす子どもの平均年齢は12歳で、半数以上が6歳未満で施設に入所しています。
施設での生活
日本の児童養護施設では、大規模な共同生活型の施設から、より家庭的な養護に近づけるよう、小規模なユニットへの移行が進められています。大規模な施設では、子どもたちは性別や年齢でグループ分けされることが多いものの、異なる年齢や性別の子どもが一緒に生活する施設もあります。また、兄弟姉妹が必ずしも同じ施設に入所するわけではなく、同じ施設であったとしても別々のグループで生活することもあります。
子どもたちは地元の学校に通い、趣味やスポーツなどの余暇活動に取り組むほか、施設が主催する行事や子ども会、地域の活動にも参加します。親族が面会できる場合には、週末の訪問が手配されることがあり、長期休暇中には家庭に戻り宿泊をする子どももいます。
![]() |
![]() |
子どもたちを取り巻く現状
社会からの偏見
社会では、児童養護施設に対する正しい理解がまだ普及していないのが現実です。「問題行動が多い子どもたちや、反社会的な子どもたちが多い」等の偏見が根強く存在します。また、社会制度が彼らの状況に十分対応しておらず、アパートや携帯電話の契約時の困難、就職差別だったりと、さまざまな困難が生じています。施設で生活していることや、施設出身であることを秘密にしている子どもや大人も少なくありません。
心の傷
過去に辛い複雑な経験をして入所してきた子どもたちの多くは、心に深い傷を抱えており、その心理的なトラウマが彼らの成長や将来に影響を与えています。こうした課題や生きづらさは、施設を出た後も長く続き、自立して生活を送る力を妨げることが少なくありません。
|
|
|
|
|
|
自立への移行
児童養護施設の子どもたちはの多くは、18歳の高校卒業と同時に施設を退所し、衣・食・住すべてにおいて自立をします。高校時代の施設にいる間、ある程度の準備はされているものの、施設での保護された生活から自立した生活への移行は急で、非常に大きな負担を伴います。自立後の新しい環境で、多くの若者たちは金銭管理、学業と仕事の両立、新しい人間関係の構築、社会的偏見や孤独感への対応などの課題に直面します。
ある職員は、子どもたちが18歳になり、施設を退所することは世間の人々にとっては一つの門出のひと段落のように感じるかもしれませんが、子どもたちにとっては、ここから本当の学びや成長、そして夢に向かう道のりが始まる瞬間であると話していました。
限られた道と未来
高校卒業後に自立して、頼れる大人もいない子どもたちは、経済的な理由から就職を選ぶ子が多くいます。全国の高校生の約60%が大学等に進学しているのに対し、施設出身の子の進学率は20%ほどという調査結果が出ています(2024)。また、進学したとしても、生活費を賄うため働かなければいけなく、学校と仕事を両立しなければいけない難しさから、中退してしまう子も少なくありません。
身の回りの物理的な準備に加え、自分自身の心構えもできていなく、社会に十分なセーフティネットがあるとはいえない状況で、心の傷も癒えないまま「自立」していく多くの子どもたちの展望は、決して明るいとはいえません。
準備不足で予測できなかった問題に立ち向かい、全く新しい生活に一人で適応していくことは、非常に大きな努力と精神的な強さを必要とします。残念ながら、そうした状況にうまく対処できない子どもたちもいます。施設では、若者たちへの支援体制を整え、必要な物資の提供や相談の場を設けるなどの取り組みが進んでいますが、こうした支援は依然として職員と子どもたちの個人的なつながりに頼っているのが現状です。職員の不足も深刻であり、全ての若者が平等かつ十分な支援を受けられるよう、制度的な改善が求められています。
私たちはこの10年間で、退所後の自立した生活に適応できずに、課題に直面した卒業生たちの姿も見てきました。その結果として、自分たちの進みたい道とは異なる以下のような状況に陥ってしまう若者もいるのが現状です。
- 離職
- 孤独感
- 搾取
- ホームレス