プログラム

みらいの森プログラム

「みらいの森プログラム」は、児童養護施設で暮らす子どもたちが社会に出た時に直面する様々な問題に対応し、自分の道を自分で切り拓くために必要となる「生きる力」を、体験を通して学び、身に着けてもらうことを目的としてデザインされています。

「生きる力」とは

施設に住むほとんどの子どもたちは高校を卒業すると同時に、完全な自立を強いられます。それまでの守られた施設での生活から一変し、周りからのサポートがほぼなくなってしまう中で子どもたちは、今まで経験したことのない問題や状況に直面します。みらいの森では、例え見たことや聞いたことのないことでも、それに対してきちんと考えることができ、自ら解決方法を見つけ出し、困難を乗り越えることのできる力のことを「生きる力」と呼んでいます。

自立していく子どもたち全員に対して、問題が起きた時にその場にいて一緒に対応したり、事前に全ての問題への解決法を教えることは不可能ですが、自分でどのような問題でも解決できる「生きる力」を身に着けていれば、自立した時に何事にも自信を持って対応でき、幸せな毎日につながるはずです。常に頼れるサポートが周りに少ない子たちにとって、この力は特に大事になってきます。

国際的にも「生きる力」(ライフスキル)の必要性は認識されていて、世界保健機構やUNICEFから出ている定義や具体例は、みらいの森が考えている「生きる力」と強く共感します。

「ライフスキルとは、日常生活で生じるさまざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対処するために必要な能力である。」(World Health Organization;Life Skills Education in Schools 1994より引用)

ライフスキルの具体例(Life Skills Learning and Teaching: Principles, concepts and standards, UNICEF, 2010より引用)

  • 認知力:意思決定、問題解決、創造的思考、批判的思考
  • 自分:自己認識、自己管理
  • 社会:コミュニケーション、対人関係、共感性

プログラムのコンセプト

児童養護施設での生活には、さまざまな制約が課せられます。多種多様な体験から学ぶ機会も限られており、一般家庭の子どもたちと「体験の格差」が生じていると言われています。そんな状況の中で暮らしている子どもたちは、みらいの森の非日常の環境で、新しい価値観や考え方と出会います。キャンパー主体のアクティビティーを通して、他人に任せるのではなく、自分の意志で物事を決め、新しい事に挑戦します。そこで必要となってくる協調性やリーダーシップ、コミュニケーション力を、小さな失敗を繰り返しながら築き上げ、自分のスキルとして身につけていきます。

みらいの森プログラムでは、施設の職員さんにも子どもたちと同じようにアクティビティーに参加してもらい、普段は見られない子どもたちの一面や一人一人の可能性を実際に見てもらうことができます。そして、そこでの発見を彼らの日常の生活と成長につなげていくことができます。

体験型

みらいの森プログラムは、「生きる力」を確実に身に着け、自分の物にしてもらうため、体験を通しての学びを重視しています。子どもたちは今までやったことのないことを経験し、考えたことのないことを考え、自分自身の体験を通して物事を整理し理解することを学びます。また、実際に体験することにより、言葉や理論だけでは伝わらない感覚や考え方に触れ、一人一人に合った方法で学ぶことができます。さらに、プログラム内では失敗してもやり直し、そこから学べる環境を創り上げています。

継続的

毎月、そして毎年参加できるプログラムに継続的に参加することにより、子どもたちは前回のプログラムの経験をもとに学びをさらに積み重ねることができます。また、何度も参加している子どもたちは、馴染みのある環境に安心感を持ち、普段はやらないようなことや、新しいことにも挑戦していきます。さらに、参加する子どもたちの成長に合わせ、小学生から高校生まで、年齢やレベルに合ったカリキュラムをプログラムに組み込んでいます。

3つの道具

みらいの森プログラムでは、子どもたちがそれぞれの方法と自分のペースで、楽しみながら学ぶために3つの道具を主に活用しています。

アウトドア

自然という非日常で、差別や偏見のない環境は、子どもたちに自分のことは自分で責任を持つことや、自分で考えて行動する力を育みます。また、物事を広い視野でとらえ、想像力を養い、目的や目標設定などを学ぶことで、自らゴールへたどり着く術を学びます。

多文化・多様性

馴染みのない文化や言語、世界に存在する多様な生き方や価値観に触れることにより、子どもたちはさらに視野を広げ、その中で新たな自分を見つけることができます。また、普段の「常識」が通じない相手と交流することで、新たな表現方法などを学び、コミュニケーション力を高めます。

ロールモデル

子どもたちは、親でも、先生でも、職員さんでもない、様々な背景を持つスタッフやボランティアと出会います。多様な形で活躍している大人たちと交流し、将来の仕事やライフスタイルの選択肢に気が付き、可能性を広げます。

5-Values

みらいの森では、プログラムで学んだことを日常の生活に持ち帰り、そこでも学びを継続するための道具の一つとして、「5-values」を使っています。キャンパーたちには、「みらいの森が大事にしている5つのこと」として覚えてもらい、プログラムごとに頑張るバリューを自分で決めてもらったり、キャンプリーダーから特に見せてくれたバリューのシールをもらったりなどし、自分のことをさらに良く知る機会になります。また、他の人のバリューにも目を向けることで、自分の周りに気が付くきっかけにもなります。

思いやり・Kindness
相手が何を考えているか、何を求めているかを考え、相手の気持ちになることを学びます。また、自分が他の人を思いやることで、他人が自分の為にやってくれていることに気が付くことができます。

尊重・Respect
意見が食い違っても、決してそれが間違っているわけではなく、世の中には多様な考え方があることを学びます。そして、それを踏まえた上で、どのように対応すれば良いかを学びます。

責任感・Responsibility
自分のことは自分で責任を持ち、身の回りの物の準備や片付けだけでなく、自分の意見や行動などにも責任を持つことを学びます。また、物事を自分の責任として捉えることにより、少し先を見据えて物事を考える力を養います。

勇気・Courage
高いところから滝つぼにジャンプする、人前で話す、初めてのところに一人で行くなど、恐怖を感じることは、多々あります。しかし、勇気を出して新しいことにチャレンジすることにより、苦手ことを克服し、新しい自分を見つけ、可能性を広げることができます。

リーダーシップ・Leadership
ゴールに向けて物事を自ら進める力を学び、身に着けます。また、人や意見をまとめるために欠かせないコミュニケーション力もリーダーになることにより学ぶことができます。

 

キャンプマジック
キャンプでは子どもたちが施設では見せたことのない、職員さんもびっくりするような面が見られることがあります。キッチンでお手伝いしたり、好き嫌い言わずご飯を食べたり、人前で大きな声で発表できたり、8㎞のハイキングを文句言わずに一人で歩けたりと、子どもによって様々ですが、普段では決してやらないようなことがキャンプではできてしまいます。みらいの森ではこれを「キャンプマジック」と呼んでいます。これは子どもたちが自ら自分の可能性を表に出してきている証拠で、プログラム内でもとても大事にしています。また、このキャンプマジックをどのように日常生活につなげるかもプログラムとして、常に工夫を重ねています。

年間プログラム

みらいの森では子どもたちの可能性を最大限に引き出す長期宿泊型と、その効果を継続して次のステップへの橋渡しになる日帰りプログラムを、一年を通して行っています。

長期宿泊型プログラム

夏休みや冬休み、時には週末を使って開催する宿泊プログラムでは、子どもたちはチームとして活動します。常に大人が世話をしてくれる普段の生活と違い、自分たちでチームをまとめてアクティビティーに参加します。自らがまとめ役になることでチームワークや他のメンバーとの協調性の大切さに気付き、コミュニケーション力を養い、リーダーシップを発揮してくれる子も多くいます。数日間活動を共にすることで、スタッフや新しい仲間と信頼関係を築き、安心できる環境の中で、日常ではなかなか挑戦しないようなことにもチャレンジできるようになります。
普段とは違う環境で他の子どもたちと生活の場を共有し、自然の中でのアクティビティーを楽しむための装備や道具などを自分で管理することで、子どもたちは「自分のことに責任を持つ」ことを学びます。また、何度か参加したことのある子どもたちは、初めての参加者に教える役に回ったり、お手本になったりと、リピーターがより一層輝くプログラムでもあり、「キャンプマジック」(後述)がもっとも生まれるプログラムでもあります。

日帰りプログラム

毎月開催する日帰りプログラムでは、子どもたちはハイキングやクラフト、木こり体験、ラフティングなど、さまざまなアクティビティーを通して興味の世界を広げることができます。プログラムには多種
多様な背景を持つプログラムスタッフや、スポンサー企業の従業員ボランティアの方なども参加します。定期的に参加することで、子どもたちは多くの大人と交流する機会が増え、普段の生活では出会わないような考え方や文化に触れて、視野を広げることができます。また、多くの職業やライフスタイルを持つ大人たちと交流し、自分たちの将来の選択肢を広げることができます。

リーダー実習プログラム

施設退所後に自信を持って社会で暮らしていくために必要な知識や技術、物事の見かたや考えかたを学ぶ、「自立」に焦点を当てた高校生向けの年間プログラムです。毎月のプログラムにはサポートスタッ
フとして参加し、サポートされる側ではなく、サポートする側に回ります。そこでのリーダーとしての体験や、プロジェクトマネージメントやパブリックスピーキングなどのワークショップを通して、自立後の生活に直接つながるスキルを身に付けます。また、企業訪問プログラムでは、様々な業界の会社とそこで働く人たちと出会い、社会の仕組みを学び、「働く」ことへのより正確なイメージを持ってもらい、よりスムーズな自立を迎えるための知識を得ることができます。

プログラムの効果

みらいの森は、関わってくださったスポンサー、スタッフ、ボランティアや職員さんのおかげで、延べ2,800人以上のキャンパーたちに、プログラムを通して新しい体験の場を提供することができました。様々な形で成長していく子どもたちのストーリーやコメントはこちらのページからご覧になれます。