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みらいの森について知るシリーズ#3 施設で働く職員さんたち

みなさまに児童養護施設とそこに暮らす子どもたち、そしてみらいの森の活動について、ブログにてシリーズをお届けしています。今回は児童養護施設で暮らす子どもたちの一番のサポーターである、施設の職員さんたちについてです。いつも笑顔で子どもたちと一緒にみらいの森に参加してくれる職員さんたち、彼らの仕事の内容や環境を少しだけ探ってみました。施設と子どもたちについてより知識を深め、みらいの森についてよりよく知っていただけるきっかけとなれば幸いです。

シリーズ#3:施設で働く職員さんたち

            子どもたちの成長を最も身近で見守り、彼らのために努力を惜しまず、彼らの幸せを一番に願っているのが施設で働いている職員さんたちです。職員のみなさんの仕事の大変さは、側から見ている私たちにでも見えてきます。様々な年齢、背景、性格を持つ子どもたちに一貫して寄り添うことはただでさえ大変ですが、施設に暮らす子どもたちを支えるにはさらに専門的な知識と強い忍耐力が必要です。

            職員さんたちは毎日の掃除や洗濯、食事の提供など、子どもたちの身の回りの世話はもちろん、学校や習い事の調整など、子どもたち一人一人に最適な場を提供するため日々働いています。しかし、子どもたちの中には過去のトラウマを抱えた子も多く、そのような子たちのために専門的な知識も必要となります。また、現在児童養護施設で暮らす子どもの多くは親との交流もあるため、施設の職員さんは親や家族とのやりとりにも関わっています。子どもたちの面倒を見る「ケアワーカー」だけでなく、「ファミリーソーシャルワーカー」としての役割もあるのです。さらに、児童相談所等の関係機関との連携も必要不可欠で、そのためには社会的養護を取り巻く法律や制度を把握し、子どもたちが直面する特殊な制限なども理解している必要があります。

            施設での勤務体制は交代制で、24時間、常に職員さんの誰かが子どもたちと一緒にいる体制になっていますが、担当の子どもにトラブルがあったり、何かが緊急で必要になると、勤務時間外でも対応することが度々あるそうです。また、子どもたちの辛い過去や、彼らを取りまく困難を毎日のように目の当たりにし、精神的に消耗してしまう職員さんもいるそうで、離職率の高い職業としても知られています。2014年に行われた調査では、子どもたちの毎日の生活を担当する職員の勤続年数は、半数にあたる50.5%が5年未満だったと報告されています。また、2014年4月までの3年間で離職した職員さんの平均数は一施設につき8.5人で、1年に約3人も辞めてしまったという計算になります。【1】子どもたちが過去のトラウマから立ち直り、新しいことを学び成長していくためには安定した生活環境が必要ですが、その環境の確保の難しさが伺えます。そんな中、2015年には社会的養護の制度の見直しが行われ、小規模化に伴う配置職員数の増加や給与の改善などが盛り込まれた、実に40年ぶりの大幅改定となったそうです。【2】また、施設職員さんへのサポートや育成指針なども整えられ始め、子どもたちだけでなく、彼らの成長を支えている職員さんにも、ようやく焦点が当て始められました。

            児童養護施設には多難な背景とユニークな性格、そして様々な夢を持った子どもたちが暮らしています。職員さんたちは子どもたちが辛い過去を乗り越え、将来幸せになるためにとても重要な役割を担っています。しかし、多様な夢を持つ子どもたち全員に最適で、かつ平等な機会を提供することは簡単ではありません。そこで施設では、より多くの子どもたちが自分の夢に向けて進んでいけるよう、外部からのサポートを受けて入れています。様々な分野の専門的な知識を得るだけでなく、違う価値観や考え方を持つ人たちと交流することで子どもたちは視野を広げ、自身の可能性に気付くことができます。常に子どもたちのためを考え、施設だけでは提供できないような機会を探し求めて子どもたちとつなげてくれる、施設の職員さんたちはみらいの森にとっても欠かせない大切なパートナーです。

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#1 児童養護施設について

#2 児童養護施設に暮らす子どもたちについて

#4 みらいの森から見る子どもたちの課題

#5 みらいの森プログラム-基礎概念

#6 みらいの森プログラムツール

#7 プログラムの目的

#8 成果、課題、そしてこれから

【参考文献】

  1. 公益財団法人 資生堂社会福祉事業財団. 「社会的養護(児童福祉施設)における人材育成に係る要件に関する研究」報告書, (online) https://www.zaidan.shiseido.co.jp/activity/carriers/publication/pdf/research201604.pdf、参照 2021-06-20
  2. 全国児童養護施設協議会. 児童養護施設の研修​体系-人材育成のための指針-. 平成20年2月, (online) http://www.zenyokyo.gr.jp/whatsnew/160501kensyu-shishin.pdf、参照 2021-06-20