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みらいの森について知るシリーズ#2 児童養護施設に暮らす子どもたちについて

みなさまに児童養護施設とそこに暮らす子どもたち、そしてみらいの森の活動について、シリーズをお届けしています。前回は児童養護施設の仕組みについてでしたが、今回はそこに暮らす子どもたちに焦点をあてていきます。施設と子どもたちについてより知識を深め、みらいの森についてよりよく知っていただけるきっかけとなれば幸いです。

日常の生活
           施設では子どもたちが安心して、充実した日常が送れるような環境が保たれています。また、それぞれの施設や規模によって多少異なりますが、最近の傾向として昔のような大人数での集団生活ではなく、一般家庭に近い、少人数のグループで生活できるように体制が整えられています。大きな施設でも、施設内で小規模なホームグループに分かれていて、それぞれに玄関やキッチンなどがついている一つの「家」として暮らすことができます。このグループも男女混合のホームもあれば、別々のホームもあり、年齢でまとめてるところもあれば、縦割りのところもあるなど施設によって様々ですが、特に年齢が上がるにつれて1人部屋になるところが多くあります。食事は基本的に職員さんが用意して、ホームごとに食べるところが多いようです。
           子どもたちは施設から学校に通い、習い事やスポーツクラブなどに本人の希望で通うこともできます。また、地域の子供会の行事などにも参加し、施設としての行事に地域の方を招待するところもあります。親や親戚と面会が可能な子は、休みの日などに会うことができ、長期休みなどには一時帰省する子もいます。兄弟姉妹が同じ施設にいる場合もありますが、必ずそうなるとは限りません。施設が同じでも違うホームの場合もあります。

子どもたちが抱える課題
           施設では子どもたち個々のニーズに合わせて生活できるように、グループの小規模化が進められていますが、それでも多数の大人が多数の子どものお世話の担当になることは避けられず、特に問題を起こさない静かな子が見過ごされないよう、職員さんたちも気を配っていると聞きます。また、児童養護施設のことがまだ世間でよく知られていないこともあり、学校やバイト先での偏見や差別から、友達にさえ施設で暮らしていることを隠している子が多くいるそうです。さらに、世の中の仕組みも、このような状況にいる子たちに柔軟に対応できるようには整っていないため、普段は親が保証人となる携帯電話の契約なども通常の手続きでは行えず、余計に時間や手間、お金がかかるなど、様々なところで困難を強いられます。
           子どもたちの中では過去の経験から心に傷を負った子も多く、場合によっては日々の生活に支障が出てきてしまう子もいます。施設では専属の心理士さんが配置されていて、それぞれの子の必要に応じて定期的にカウンセリングを行うなど、心のケアも行われています。しかし、2019年に行われた調査では、施設に住む子どもたちの36.7%が、身体的、知的、精神的など何らかの障害を持っていると報告されています。【参1】項目の違いや重複もあるため直接比較はできないものの、全国民の7.6%と比べても比率が高くなっているのは事実です。【参2】

将来に向けて
           義務教育終了後に子どもたちが施設で生活を続けるには、原則18歳未満で就学していることが条件です。したがって、子どもたちは中学校卒業後、高校へ進学することを勧められます。しかし、受験に受からなければ進学できず施設にもいられないため、子どもたちには上を目指してもらいたいものの、受かりそうな範囲の高校を薦めざるを得ないというジレンマを抱えていると、職員さんから聞いたことがあります。また、子どもたちの将来就きたい職業として、「施設の職員」や「保育士」がよく挙げられます。この選択肢は決して悪いことではないのですが、世の中のことに幅広く触れ、視野を広く持つ機会が限られているのではないかと感じます。
           子どもたちは退所後の自立生活に向けて、施設にいる間から準備を始めます。施設によっては一人暮らしを体験するための部屋があり、そこで寝泊まりしながら生活費の予算を立てて買いものに行ったり、自炊の練習などをすることができます。また、自立後の生活を始めるのに必要な資金を確保するため、高校に入るとアルバイトを始める子も多くいます。

退所、そして自立
           施設を退所した後、多くの子は経済的な理由から就職を選びます。2019年に行われた調査では、施設生活経験者の進学率は40%ほどで、ここ数年で増加傾向にあるものの、同じ年の全高校卒業者の76%と比べるとまだ差があります。【参3】また、上記の数字には通信制高校や特別支援学校の卒業者が含まれていないため、実際の進学率はさらに低くなります。さらに、同じ調査で、進学したものの4年以内に中退してしまう子が20%以上おり、全学生の中退率の10倍にもなると報告されています。様々な理由はありますが、バイトをして生計を立てながら学校へ通う難しさはよく耳にします。
           施設では、アフターケアとして、退所していった子どもたちへの定期的な連絡はもちろん、食料や物資を送ったり、必要に応じて相談に乗ったりと様々な形でサポートを継続しています。急に住む場所を失ってしまった子の一時的な受け入れも行っているところもあるそうです。しかし、施設に暮らす小中高校生の面倒を見ながら、さらに卒業生たちとのつながりを保ち、臨機応変にサポートしていくことは簡単ではありません。また、担当だった職員さんがいなくなったため、施設との連絡が途絶えてしまったという話もよく聞きます。特に卒業生が学校や仕事を辞めてしまった後に連絡が途絶えてしまうケースもあり、本当にサポートを必要としている子どもたちに支援が行き届いていないのではないかとの懸念もあります。
           高校卒業と共に始まる自立生活は、それまでの施設での生活から一変します。常に見守ってくれていた、頼れる大人がいない状況で、新しい学校、職場、人間関係、一人暮らしなど、今まで経験したことのない、まったく新しい環境と問題に柔軟に対応していかなければいけません。急に手に入った「自由」と「責任」に困惑し、良いバランスを見つけるのに苦労する子も多くいます。自立後に必要な知識やスキル、心構えを、学校や施設にいる間に身に着けることは簡単ではありません。施設の職員さんの切実な声としてよく聞くように、児童養護施設で生活できるのが18歳までなので、そこで一段落と感じてしまいがちですが、彼らの本当の学び、成長そして夢への第一歩は、施設を出てから始まるのです。

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#1 児童養護施設について

#3 施設で働く職員さんたち

【参考文献】
1. 厚生労働省子ども家庭局. 児童養護施設入所児童等調査の概要(平成30年2月1日現在). 令和2年1月、(online) https://www.mhlw.go.jp/content/11923000/000595122.pdf、参照 2021-05-20
2. “参考資料 障害者の状況” 内閣府.  https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r02hakusho/zenbun/siryo_02.html、参照2021-05-20
3. 認定NPO 法人ブリッジフォースマイル. 全国児童養護施設 退所者トラッキング調査2020. 2020 年11月, (online) https://www.b4s.jp/wp-content/uploads/2021/04/report-tracking-research-2020.pdf、参照 2021-05-20